自分の記憶に残る空間について、いったんそれを(注意深く)言葉に変換し、記述してください。あるいは、自分にとって印象的であれば、誰かから聞いた空間の話や、小説の中の空間等、自分以外の誰かによる、「空間についての記述」を出発点にしても、構いません。(空間→言語)
次に、そのテキストを(他者として)読んで、描写された空間を想像し、そこに感じる魅力や特性を引き延ばし増幅した上で、再度、目に見える空間として提示してください。(言語→空間)
(この新しいイメージは、当然、元の空間とは異なります。)
・ 例えば、自分がかつて住んでいた家や、見た建物。それを体験していない誰かに伝えようとする場合、(もし手元に写真やビデオがあれば、補助手段として使うにせよ)私達はその体験を言葉に変換して、説明を試み、共有しようとします。
・ こうして、言葉によって説明された空間は、今度はそれを聞いた受取り手の頭の中でイメージされることになりますが、それは必ずしも元の空間に一致せず、大抵、少し別の像を結びます。
・ 空間は言葉に変換されることで、いったん「見えなく(invisible)」になりますが、だからこそ、いかようにも妄想され、捏造され、拡張されます。(例えばイタロ・カルヴィーノの『見えない都市』やボルヘスの『バベルの図書館』が魅力的で、読者の果てしない想像を可能にするのは、それが絵でなく文字で提示されているからです。そして、しばしば小説が映画化される際、『イメージと違う』と感じるのは、100人の読者は100通りの空間を想像しているからです。)
・ しかしそれ故に、こちらの思い描く空間を、できるだけ正確に誰かと共有したい、と思う場合、言語では限界があって、「見える(visible)」形で、提示する必要がでてきます。例えば、設計者としては、クライアントに、模型やパースをつくって(同時に言葉でも説明して)イメージの共有化を図ります。
・ つまり、空間⇄言語の往復作業は設計する際には多かれ少なかれ行っていることですが、今回はあらためて、その行き来の過程を意識してください。往復の中での、振幅を楽しみ、言葉によって触発される新しいイメージの伸張と、それを今度は、空間として表現する手法を探ってみてください。
○ 中間提出: 12月15日(水)13:00
元となる空間を描写したテキスト 及び 原型イメージ(27cm×27cm)
○ 最終提出: 12月22日(水)13:00
縮尺自由とする模型、テキスト、コンセプト・ドローイング。用紙自由。